日々の施術27 前頭直筋が重要であることの続き

前回、前頭直筋が、頸椎の一番と頭蓋骨を前側で繋ぎ、頭を頷かせたりする重要な筋肉であることを書いた。

重要な割には小さく、そして深い所にあるため、触ることも、想像されることも殆ど無いこの筋肉が首の凝りのみならず、全身の調子を整える鍵を握っていることが少なくない。

さて、この筋肉がカチカチになると、上に向こうと、首の後ろ側の筋肉が頑張って縮んでも、あまり上を向くことが出来なくなる。

上に向くとき、頸椎一番と頭蓋骨が柔軟に動かない場合、首全体が後ろにしなって上を向くことになる。結果的に上を向けるのだが、これは「代償行為」と言われて、正式な動きではない。

首を垂直に立てたまま上を向くことが出来ない人は、前頭直筋が硬く、縮んでいる可能性がある。

筋肉は、硬くなるとだいたい縮む。そして太くなる。

硬い=縮んでいる=太い

この三点はほぼ間違いなくセットである。

だから、前頭直筋が硬くなっている人は、正常時より前頭直筋が短くなっているわけで、下手をすると、勝手に頭部が下向きになってしまう。


これを防ぐ為に、首の後ろの筋肉は常に力を入れ続けていなければならなくなり、いつかこの筋肉も硬くなっていく、という悪循環が発生しがちだ。

このように、一個の重要な筋肉がダメージを負うことがきっかけとなり、周囲の筋肉が全体的にダメージを負ってしまうことは多々ある。

前頭直筋は頭の前後の動きだけ無く、左右の動きも担っているので、左右に回転させる他の筋肉にもダメージが及んでいき、かくして、気がつくと、喉仏から上の筋肉が前後左右硬く、張りが出て、不愉快感が出て来る。

首の後ろだけでは無く、顎の後ろ、顎の下、喉仏の上部などがくまなく腫れたような感じになっている人は沢山居る。

上記したように、筋肉はダメージを負うと、硬く、短く、太くなるからだ。

美容上も非常に好ましくなく、この状態ではいくらリンパマッサージなどしても、焼け石に水。お金の無駄である。


さて、この辺りの筋肉が硬く、膨らむと、この付近を通っている血管、神経が圧迫されて全身に様々な症状が出る。

全身のコントロールをしている脳と、体を繋ぐ最重要経路が詰まるので、これは大変だ。何しろ、脳と体を繋ぐ神経と血管は全てこの狭い所をに集約されてきて、ここを通過するからだ。海で言うと、まさに海峡。

とはいえ、大多数の神経は脊髄にカバーされた中を通るし、血管も骨で保護されているものもあるので、大雑把なイメージでは7割方大丈夫なのだが、残り3割とはいえ、重要なものばかりなので、影響は大きい。

残り3割で真っ先に思いつくのは、内臓をコントロールしている迷走神経だ。

これは脳から出て、耳の下奥と首の間にある穴(頸静脈孔)から脳内を巡った静脈と共に出て内臓に向かうのだが、この穴のあたりは頭をコントロールする筋肉が密な所で、影響をもろに受ける。

前頭直筋を柔らかくしていると、周りの筋肉もどんどん柔らかく細くなり、神経への圧迫が減るので、お腹が激しく鳴る。

実際に経験した方も多いと思うが、これはそれまで動きが鈍くなっていた内臓が、神経の伝達がよくなって喜んでいる音なのである。効果は、胃もたれが無くなる。消化がよくなる(何しろ動きがよくなるので)、便秘が解消されるなど、沢山ある。


もう一つ重要なことがある。

この穴(頸静脈孔)からは脳内を巡った血が静脈として流れ出る。

脳の血流は絶対に止まらないよう、脳内に流れ込む動脈は大きく分けて3系統に分かれている。バイパスも作られていて、どこかが詰まっても、かならず血が行き渡るように、セーフティネットが巧みに設計されている。

それに対して、脳内を巡り、様々な仕事をして、汚れ、二酸化炭素が沢山になった血液はほぼ全てがこの孔に集まってきて、首に送られる。

入り口(動脈)は重要かつ、起立しているときには重力に逆らって脳内に血を送り込まなければならないので、巧みに設計されているが、出口は結構簡単である。


特に押し出す仕組みもなく、重力によって何となく集まってきて、この孔から出る。

だから、この孔の周囲の筋肉が膨らみ、圧迫されると脳に汚れた血液が溜まりやすくなる。

動脈流の方は数秒止まっただけで気絶しかかるくらいだから、機能不全になったのは誰でもすぐ分かる。

しかし、排出が滞るのは自覚症状に乏しく、分かりにくいし、なにより我々の頭の中の所書には、脳に血が入ってこないことへの恐怖は書かれていても、出て行かないことへの不具合など全く記載されていないので、誰もが無頓着である。

しかし、二酸化炭素と老廃物を引き受けた血液が、さっさと肺へと退出せずに、ウロウロと脳内に止まっていいわけがない。


頭重感、頭痛、頭の回転が悪くなる感じ、不定愁訴、目のかすみなどの、不快症状が襲ってくる。

多くの人が「脳に血液が行ってないのでは無いか」と疑ったりするのだが、大体逆で、血液がすんなり出て行っていないことの方が多いのである。

それもこれも、頸静脈孔付近の筋肉が肥大し、孔を塞ぎにかかるからだ。そして、塞ぐ原因は色々だが、前頭直筋が原因となっているケースは多い。

脳の静脈孔、前頭直筋という、多くの人々が夢想だにしないマイナーな存在によって損なわれている健康は実に多い。

当院はどこでも治せないものが治る、と評判を呼んで、ただの家でやっているにもかかわらず、沢山の予約を頂いているが、こういう「普通着目されないところ」を施術することが多いからだと思っている。

普通着目されない所が引き起こしている疾患は山ほどあるのであるが、注目が注目を呼ぶので、ブームになると皆そこにばかり注目して、非常に細かい所をああでもない、こうでもないと議論する。


食事や枕などもそうで、議論百出で、これがいい、あれがいい、いや、それはダメだなどなど、凄く細かいレベルで議論されているが、食品添加物がちょっと入っているか否か、何時に何食食べるといいか、炭水化物を取り過ぎたか否かなどどうでもよくなるような、もっと重要なポイントというのが人体には山ほどある。

食事についてはこれだけ色々言われていても、決定的なものはなく、次から次から色々説が出てくるのは、要するに、案外健康の最重要キーではないからである。

いや、重要キーであるのは間違いないが、とにかくやたら細かく掘り下げて行く前に、視界に入っていないことがまだまだあるので、とりあえず、もっと視界を広げて、他の問題点を知るのが先決だと思う。


閑話休題 


さて、前頭直筋が何故硬く、縮むか。

それを解除するには具体的にどのような手技を用いるのか。

については更に次回説明することにする。


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