神宮外苑での遊具火災

 数年前の神宮外苑での遊具火災、担当教授が不起訴となったらしい。

木製ジャングルジムの中におが屑を詰めた遊具(学生制作)の中に置いたライトアップ用の白熱電球から、おが屑に火がついた事故。(写真)



予見が難しかったということで不起訴なんだが、確かにそうだろう。

ただ、私は思うところがあるので、他山の石とすべく一言記事にしておきます。

なかなか知られていない話なのでご一読を。

話は一見大きく変わりますが、私は香川出身なので讃岐うどん好き←当然

その讃岐うどん界でも「レジェンド」とされる誰もが一目置く神中の神がいるが、それが「宮武」の宮武一郎氏←クリック。




もう閉店してしまいましたが、閉店前は長蛇の列でした。

私は宮武一郎氏の長男と高校の同級生だったので、彼の家に行って泊まったりしてました。

その度に一郎氏のうどんを手べていたのですが、その時はまだうどんブーム前夜。

並びなんてありようもなく、近所のオジサン相手に自宅改造の土間で一杯100円のうどんを細々と売っていた。

それでも、一郎氏は研究熱心で当時から様々な工夫をしており、それがうどんブームになったときに一気に開花、一躍讃岐うどん界のスーパースター、いや、スターを超えたゴッドに彼を押し上げたと思う。

讃岐うどんは、家で茹でる麺を買ってくると必ず「大量のお湯で茹でるように」と書いてある。

具体的に「2リットル以上のお湯」と書いてある場合もある。

要するに、ギチギチの状態で茹でずに、お湯の中で麺が踊りを踊るぐらいの余裕を持って茹でろ、ということであり、どこにでも書いてあるということは、これが美味しさの鍵を握っているという作り手の共通認識があるからに他ならない。

少量のお湯で茹でると麺がお湯を吸って一気にお湯不足に陥り、ドロドロのお湯で茹でなければならない。

うどんは茹でるに従い麺に含まれる大量の塩を排出してくのだが、少量のお湯だとこれが上手くいかないのである。

もう一つ。

少量のお湯だと、麺を投入すると一気に温度が下がり、家庭用コンロの火力では再沸騰までにかなりの時間を要する。

これも味の低下に繋がる。

従って多くの讃岐うどん屋では、人が入れるくらいの湯で釜に大量の湯を沸かして、そこにせいぜい10人前程度の麺を入れるということをやっている。

こうすると麺の中の塩分も逃げるし、なにより麺に対するお湯の量が圧倒的に多いので、少々の麺の量では沸騰が妨げられない。

このお湯の中で麺はお互いにひっつくことなく、自由にグルグル回りながら茹で上げられていく(あんまり動いても駄目らしいがここではそれほどうどんの製法の話をしたいわけでないので、適当に割愛。本文の趣旨ではないので、うどんマニアはここに食いつかないようにして下さい)。

お湯の量とそれを支える火力が非常に重要なのだ。

脱サラしてうどん屋を始めたばかりの宮武一郎氏も、火力に注目した。

しかし、家庭用のガスしかなく、ドラム缶のような、巨大な麺ゆで釜を買ったものの、沸騰にも、麺入れ後の再沸騰にも時間がかかる。

何とか一気に最大の火力が得られないかと研究を重ねた結果、一郎氏が目をつけたのがおが屑だった。

おが屑は、火を着けるととんでもない勢いで一気に燃える。燃焼時間は短いが短期の火力は凄いのである。

近くに製材所があったので、タダでもらえる。

製材所は産業廃棄物で有料処理しなければならんので大助かり。

軽トラでおが屑を運んできては、一気に沸騰させたい時や、麺入れ後の再沸騰時にブーストとして使用していた。

後年、並びの絶えない大繁盛店になってからは大火力バーナーを導入、さすがにおが屑ブーストはしていなかったが、私が高校生だった80年代にはまだやっていた。

おが屑は、火が付くと全く手が着けられない。

分かっていても凄さに驚くが、不意打ちされたら消化どころの話ではなく、ひたすら逃げる以外にないと思う。

ものの数分で燃え尽きてしまうが(量にもよるが)、その一瞬の火力はガソリン並みといていい爆発的なものなんである。

事故に話を戻すと、数秒でジャングルジムが猛火に包まれ、数分で犠牲者は上半身が原型をとどめないまで焼けてしまったらしい。

父親が横にいながら、という意見もあるが、数秒で一気に恐らく3メートルは上がったと言われる火柱を前に、なすすべは、父親にも犠牲者にも無かったと思う。

この知識が何かの折に、皆さんの安全、工夫に役立つことを祈っています。


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