日々の施術22 ☆パーキンソン病
☆パーキンソン病
☆70代男性
☆症状
昨年から歩くときにふらつくようになったり、思うように動けなくなる。
病院を受診し、昨年末にパーキンソン病と診断される。
現状は歩けるが、ぎこちない。
遠く(健常な人の足で10分程度)まで行くのは付き添いがないと怖い。
靴の脱ぎ履きに時間がかかり、階段も一人での上り下りはゆっくりなら可能だが、目を離すのは怖い。
3月末に一度来院し、骨盤と頸椎の調整で一度で非常によくなった。
その後2週間ほどは、一人で家を出て、約5キロをぐるっと3時間くらい掛けて散歩に出かけたりして、周囲を驚かす。
その後コロナ騒ぎとなり、外出を控え、来院もできない状態に二ヵ月以上置かれてしまったので、以前の症状が復活している。
☆施術
およそ2ヶ月半ぶり、2回目の施術。
一通りチェックすると、骨盤などは良好な状態を保っているので、頸椎と頭蓋への施術、エネルギー施術に力を注ぐことにする。
動きは鈍く、表情も乏しいが、1回目の施術を受ける前よりは良好という。チェックしてもそれは感じられる。
とにかく頸椎が一個一個左右にジグサグになっているような状態で、パーキンソン病以前の問題でこれだと体調は悪くなるし、例え健康な人でも歩いていてもフラフラするだろう。
それから、頸椎1番が後頭骨に変な角度でめり込んで止まっている。
姿勢が悪く、首が前に突き出している状態なので頸椎1番と、後頭骨の間に負担がかかっている。普通の人だと、上を向いているような状態で固定されてる。
これらを矯正する。
これはパーキンソン病とは関係のない、整体の世界の話である。
そして、高齢男性の症例にもれず、骨の周囲の筋肉や靭帯は硬く、反応がとても鈍い。
十年以上、このズレのまま放置され、硬くなってしまった状態である。
頸椎は非常にデリケートな部分なので、動きを伴う施術は一切行わず、いつも行っている手や指を当てているだけの施術で対応する。
時間はかかるが、確実でなにより安全な方法である。
安全というのは、施術をするにあたり、非常に重要な概念だと思っている。
本人は施術開始後5分くらいでもう寝てしまって、ずっと寝ている。気持ちいいのだ。
施術後は、背筋が伸び、一人で階段を軽く手すりに手を触れた状態で、普通のテンポで降りてきた。
施術をしないと、手すりにしっかりと捕まり、交互に足を降ろすことは不可能なので、横になって一段一段降りてくることになる。
これでまた散歩に行けそうだと言う。
一連の施術でパーキンソン病そのもの(要するに障害を起こしている神経系統そのもの)が治ったとうことでは恐らくない。この後も神経まで治せるかどうかは分からない。
これをもって、施術家がよくやってしまうような
「西洋医学で治らなかったパーキンソン病を治せた」
「医者はもっとしっかりして欲しい」
というようなことを言うつもりはない。
包括的にみて、治せてはいないと思う。
しかし、頸椎があれだけ歪み、頸椎1番と後頭骨の間の動きが失われると、脳と体の神経伝達が悪くなり、様々な障害が起こる。
そしてなにより、肩こりなどの不快症状が起こるし、首がフレキシブルに動かないということで、バランスも取りにくくなる。
これらを解除することで、患者さんはまず何より、体が快適になる。
そして、歩きやすくなる。
パーキンソン病の症状の半分くらいが消えるのである。
これは、西洋医学に整体的見地=体の歪みや組み立てを見ること
が著しく欠けているからに他ならない。
症状をとりあえず、薬でごまかしながら、経過観察して自然治癒を待つか、投薬で化学的に治す。
それがダメなら手術。
というのが大きな流れだが、体の単純な歪みを取るだけで、ごまかす為の薬の量を遙かに減らすことが出来るし、根本的に治せることも多々ある。
治せなくても、10ある症状を5くらいまで減らすことは、大体において可能なのである。
例えば、車が汚れているとしよう。
車の汚れは、空気中の排気ガスやゴミが、車体や路上にある汚染された水に含まれる油分などと合体して、しつこい。洗剤や、消しゴム用のやな専用品、さらにはコンパウンドという研磨剤で薄ーく削ることもよくやる。
しかし、その上に砂埃や、花粉が上に乗っかって著しく美観を損ねている場合もある。
まず、水を掛けるだけで、かなり綺麗になるし、場合によってはこれだけで殆ど綺麗になってしまうこともあるだろう。
全部落ちなくても、ざっと全体的に綺麗になった分、残った、水で落ちない汚れがしっかりと確認出来るようにもなる。
私がしている整体は、洗車で言うなら汚れた車体にまず水をかけて全体的に綺麗にしていみる、と行ったような非常に単純かつシンプルな下処理である。
これだけで実はほぼ治ってしまうことともあるし、全部が治らなくても、例えば3割だけでも、水をかけてだけで取れてしまえば儲けものである。
そして、残りは水じゃ無理なんだな、ということがハッキリ分かるから、それに対して、西洋医学的なアプローチをしていみる。
こういう流れにならないかな、と思うのである。
現在の西洋医学は、水を掛けることをしないで、いきなり強力な汚れ落としで、ケミカルに処理して行くようなものである。
効果の高い方法をいきなり行っているわけで、一見悪く無さそうだが、砂埃は、水で落とす方が早いうえに、砂埃がついたままいきなりゴシゴシ洗うと、塗装を傷つけてしまう。
何でも効果の高いことをいきなりやれば良いのではないと思う。
人の手で触れたり、ちょっと動かして人体を治すなんて、汚れに水をかけるだけのような、単純で前時代的なものだとハナから相手にされていない訳だが、手技は基本中の基本で、人類は近代になるまでこの方法で医療を行ってきた。
この方法「しか」なかったら、多くの人が早く命を落とした、救える命も救えなかったとも解釈できるが、この方法「だけでも」何とかやってこられたとも言えるのである。
人類には数万年に及ぶ歴史があるが、高度な衛生、石油から作られた高度な化学薬品、外科的手術を組み合わせて医療を始めたのはこの100年。今くらいの設備になったのは直近50年行くか行かないかなのである。
これらの組み合わせはもの凄く効果的で、私もとてもお世話になっているが、だからといって万能ではないのである。
あまりにも効果的なので、これが医療の全てだと思い込んでしまっているが、いやいや、そんなことはなく、つい100年ちょっと前まで、これらの高度な医療はどれ一つなかったのであるし、それでも人類は地球上をほぼくまなく闊歩して、沢山の活動をしている。
昔の医療もバカにできない。
汚れによっては、水で流すだけで十分、いきなり強い洗剤を使うと汚れは落ちるが、素材を傷つけてしまうことある、ということを思い出す必要がある。
症状によっては、触っているだけの方がよく効くことがあることを知ってもらいたいと思う。