日々の施術26 前頭直筋が柔軟なのはとても大切
☆頭がすっきりしない。首回りが重い。
特に何か悪いわけではないが、何かが違うと感じている。
こんな感じがしたら前頭直筋の硬化を疑って下さい。
☆20代・男性
☆症状
以前、酷い肩こりと、体力不足(仕事から家に帰るとすぐ寝てしまう。土日も寝ている)によりお越しになった方。
こちらの症状は、骨盤の縦ずれという、最も悪い骨盤の状態により引き起こされていた。
これは改善し、肩こりは滅多に生じず、会社帰りも飲みに行って、土日も趣味に充てられるようになったそうだ。
しかし、全体がよくなったが故に、首回りの不快感がクローズアップされててきた感じがする。
☆施術
前回頸椎の施術をして、かなり良くなってきたが、まだ何かおかしい。
首の再チェックをしたところ、前頭直筋が縮んだ状態でカチカチになっていると判断。これを改善することにした。
前頭直筋はとても小さな筋肉である。場所は首の一番上の前側。顎の奥。舌の真後ろが首と交わるあたり(舌というと、頭、顔面だから、首の上にあると思いがちですが、舌の突き当たりの奥は、首の最上部に当たります。首の上に頭蓋骨が乗っかっているののですが、その前部から顎が垂れ下がっている形になっており、個人差はありますが、顎の最下部は頸椎の三番=上から3番目、くらいにあたります)い位置するので、体表から触ることはできない。
普段生活では全く意識することのない深層部の筋肉。
整体をする人も多分殆ど意識しない筋肉だが、私はとても重要視していて、整体をやり始めたときから多くの施術をしている。
教員をやりながら見よう見まねで整体を始めた時に、既に前頭直筋はPRTテクニックでリリース(緊張を取ること)しており、固定客が当時からついていたのは、前頭直筋のリリースによる体調改善が評判を呼んだから、という面もあると思う。
頸椎一番(7個ある首の骨の1番上)のすぐ上が頭蓋骨である。
頸椎一番上に、頭蓋骨はどんな風に乗っかっているか考えたことがありますか?
恐らくないでしょう(笑)
頸椎の関節なら何となくイメージ出来ますね。骨と骨が重なって、間に椎間板というシリコンゴムみたいな、緩衝剤が入っている。
レントゲンでも見たことがあるだろう。
あんな感じで頸椎一番の上に頭蓋骨が乗っているか、というとそうではなく、頸椎一番の上には、二本の橇の足のようなものが付いている。
ロッキングチェアーの足の部分と言ったほうが近いか。
ただしロッキングチェアーの足とは天地逆に、上部が弧を描いている。
この上に、頭蓋骨が乗っかっているのだが、頭蓋骨の方には、ロッキングチェアーの足が上手く填まるような浅い溝がある。
頭蓋骨は、ロッキングチェアーの足を逆さまにしたような、上方に弧を描いた二本の棒の上に不安定に乗っかって、まさにロッキングチェアーの様に前後に頭蓋骨の溝に沿ってユラユラと揺れるようになっているのだ。
これを周囲から様々な筋肉が様々な方向に支えている。
基本的に「グラグラ」で、あまり固定されていないので、首は思ったところにサッと動けるわけだ。
整体をしていて、直に体に触れると、体は恐らく普通皆さんが想像する以上にグラグラしている。
関節は、普通「直角に90度曲がる」とされているような関節でも、左右にも少し遊びがあるし、左右に関節の部分でずらすことも可能。
これはもちろん、壊れているのでは無く、正常であって、本当に直角に90度しか曲がらず、他の方向には一切ブレがない場合は、私はそこの部分は故障していると見なします。
体の各関節のブレ、遊びは勿論程度問題はあるが、非常に重要。
特に柔軟性であることが大切なのがこの頸椎1番と、頭蓋骨の間の関節と思う。
なにしろ、わざわざ弧を描いている物体の上に頭蓋骨を神様は乗っけたわけで、グラグラさせたかったから、こういう設計にしたのだろう。
恐ろしく多数の筋肉が首の頭の周りには存在し、その走行方向も様々。
なおかつ、頭蓋骨は首の上でロッキングチェアーのようにゆらゆらしている。
だから首は様々な方向にサッと動かすことができるのだが、そのためには縮む筋肉がきちんと縮み、その反対の筋肉(拮抗筋)は何の抵抗もなく伸びなければならない。
そして力を抜いたら、縮んでいた筋肉は即座に柔らかくなり元の長さに戻る。
引き延ばされていた拮抗筋も自然に元に元に戻る。
これが正しいあり方なのだ。
しかし、この時、一つの筋肉だけが縮んだ状態で固まってしまい、伸びなかったらどうだろうか。
何か、凝ったような不快感を感じるのみならず、縮んだ筋肉を伸ばすような方向に動かさなければならない場合、かなりの抵抗を感じるだろう。
抵抗を感じるだけではなく、実際に可動域が低下したり、無理に動かそうとすると痛みが出る場合もあるだろう。
このような状態になりやすい筋肉。そしてなおかつ、首を動かし、かつ、一方で適切に固定する働きをする筋肉。
重要なのに、阻害されやすい筋肉。それが前頭直筋だ。
頸椎一番の前側と頭蓋骨底部の前側を結んでおり、動きとしては、頷く動きに使われる。
頷くといっても、首全体を大きく振って、うんうん、分かった、と大げさにゼスチャーするような動きでは無く、首全体は立てたまま動かさず、顎だけをクッと引くように頭部を前に倒す動きだ。
もし、これが自然に出来ない人は、前頭直筋がダメージを受けている可能性がある。
もちろん、首の後方にも似た働きをする筋肉、その名も後頭直筋(群)があり、前頭直筋と後頭直筋の二つがお互い伸びたり縮んだりして、首を前後に動かしている。
このように、重要な動きを司る筋肉だが、後頭直筋は体表から用意に触れるので、存在を意識しやすく、凝っているかどうかもすぐに調べられる。
マッサージもしやすく、揉むと気持ちいいので取り沙汰されることは非常に多い。
実際ネットで検索すると沢山出てくる。
後頭直筋の拮抗筋である、前頭直筋は地味すぎるので、無視されがちなのだが、後頭直筋がスムーズに縮んで、上を向く為には、反対側にある前頭直筋がスムーズに伸びなければならないのだ。
後頭直筋の凝りばかり取り沙汰されるが、後頭直筋が凝っているのは、上を向こうとして頑張って縮んでいるのに、反対側の前頭直筋が伸びてくれないため、疲れているから、又は、前頭直筋が痙攣したように縮み続け、顔が下を向いてしまいそうになるため、それに対向して後頭直筋も力を入れて中立を保とうとしている、という考え方も出来る。
そして、それは往々にして当たり。なのだ。
では、喉の奥にある、前頭直筋をどうやってほぐせばいいのか?
長くなりましたし、ちょっとテクニカルな話になるので、これは次回書くことにします。と、最後だけですますになって、今日は終了です。