「筋力をつけると腰痛が治る」のは本当か?
施術をしていると、お客さんから
「ここが痛いのは筋力が足らないからですか?」
「筋力が足らないから痛みが出ているのはわかっています」
なんていう発言をよく聞きます。
「ここがおかしいのはリンパが流れていないからですか?」
というのも多いです。
リンパ、筋力は現在のところ、体の不調、痛みが発生した際に患者さんが、まず原因と考える
二大要素だと感じています。
しかし、これらの「体の不調を引き起こすもの」は、テレビなどの影響による
「流行りすたり」があり、今はこの二つが単に医学常識っぽくなっているだけで、
かならずしも重要な要因ではありません。
間違った認識がとても強いリンパですが、今回は置いておいて、もう一つの
「筋力の低下」
について考えてみたいと思います。
腰痛等体の痛みが出て医者に行くと、整形外科に限らず、鍼、接骨院、整体などで
「これは筋力の低下ですね。トレーニングしてください」
という様なことをすぐ言われてしまうと思います。
私の子供のころはそんなことはほとんど言われなかったと思うのですが、明らかにこの10年くらいの流行りです。
「筋力が足りていないですからね…」
と嘆く30代、40代男性も珍しくありません。
しかし、ここは冷静に考えてみましょう。
本当に腰痛等の原因は筋力の低下でしょうか。
以下のことをよく考えてみて下さい
大変元気で、80、90になっても家事労働を難なくこなし、
時には小走りで走ったりしているご老人をテレビで見ることが多いと思います。
ご近所にもいるかもしれません。
大体、年取っても元気なのは女性の方が多い傾向があると思いますが、
このような90歳で足腰のしっかりしているお年寄りの「筋力」はどのくらいあるでしょうか?
筋力が不足している、と嘆いている30代男性より強いのでしょうか?
そんなことはあり得ません。
絶対的な筋肉量や、パワーは遥かに下です。
おばあさんより明らかに20代、30代女性の方が「筋力」は上ですが、
彼女たちであっても、男性より一般的に筋力が弱いのは明白です。
そして男性より弱いにも関わらず、腰痛にならない人もたくさんいます。
こんなことからも
「筋力が不足している=腰痛の原因」
という「一般的常識」は、全く間違ってはいないとはいえ、
ずいぶん無理がある理論であることはすぐお分かりいただけると思います。
腰痛の第一要因として考えるのはちょっと無理です。
少し考えるとこれはすぐに分かることでも、
医者、という立場の人間に言われると無条件に信じてしまいます。
新興宗教の理論や、エセ科学と言われるもののように、明らかに突飛な理論をいきなり持ってこられると、
強いアレルギー反応を示す人が多いのですが、未だ科学で解明されていないだけで、
もしかしたら宝の山が眠っているかもしれない新説より、明らかに単純でおかしい
「筋力不足=体の痛みの原因」
を皆信じてしまうのは、おかしな現象です。
(別にエセ科学を全面的に推奨しているわけでは全くありませんが、科学で解明されてることは、ごく一部であるのは確かです。
今の我々にはとっぴに見えることにも過剰に反応しないで、冷静に受け入れ、分析する態度はもちたいものです。
反対に常識に疑うべきものもたくさんあります)
さて、元気なおばあさんたちは、
必ずしもスポーツをやっていて、日常的に筋トレしているわけではありません。
むしろそんなことをしている人は遥かに少ないでしょう。
(反対に、スポーツをしている方のほうが痛めやすく、しょっちゅう整体に来るのは、むしろスポーツを恒常的にしている30~50代の方なのは間違いありません)
では何故絶対筋肉量が少ないのに、腰痛にならないのか。
いくつが要因がありますが、
その前に、腰痛の主な原因を簡単に二つに分けて挙げてみます。
私は特殊な施術をしているので、原因と思うことも特殊かもしれませんが、何百もの症例から考え、間違いのないところを書きます。
①腰椎、骨盤、仙骨のズレ。
そして、そのズレを補正しようとして働きすぎた、それらの骨の周囲についている、小さな筋肉や、靭帯の硬化(柔軟性の低下)
②内臓の働きの低下による、内臓のツレ(突っ張り)が腰椎、骨盤に響いているもの
この二つです。
今回は①の要因について論じます。
①のような、ズレがあると、じっとしていても、筋肉にアンバランスが生じます。
ここに
「動かなずぎる」
「動きすぎる」
「無理な体勢をする」
そして
「精神的なストレス、緊張」
等の要因が加わり、骨の周囲の靭帯、筋肉が固くなり、柔軟性を失うと、ズレがない人よりも、ズレのある人は痛みの発生する閾値が低いので(要するに痛みが発生しやすいということです)、
容易に痛みが発生します。
その他関節に発生する痛みは単純に言うと、殆どこれが原因です。
よって、痛みを発生させないためには、まず
「ズラさない」
そして
「ズレていたとしても、過剰なストレスを筋肉にかけて、硬くしない」
ということが重要になります。
要するに、腰痛を発生させないために重要なのは、無理な体勢、姿勢などで
骨をずらさない、ということです。
筋力の有無とはほとんど関係がありません。
筋力をつけても、ズレが元に戻ることは経験上ありません。
しかし、一方で
「筋力をつけたら腰痛が治った、という話を聞くじゃないか!」
と言われそうです。
確かに、これは私も聞いたことがありますし、実際にこれで腰痛を解消した人もおられるでしょう。
何故腹筋や背筋を鍛えることにより腰痛が治るか?
これは、筋力がつくからではなく、腹筋、背筋をつける為の運動により、
脊椎や、骨盤周りの筋肉に柔軟性が生じるからだろうと思います。
座り作業が長く、同じ姿勢で固まってしまった結果腰痛を生じている人が腹筋運動で改善した場合、
絶対的な筋肉量がついたから解消したのではなく、
その過程の運動が良かったのだろうと私は思っています。
しかし、先に書いたように、筋肉がついても骨のズレ、ゆがみは取れませんので、
腹筋運動を怠り、仕事などでまた長時間同じ姿勢をとり続けると、すぐに痛みが再発しがちです。
ズレという腰痛の「火種」がありますので、運動による柔軟性の維持を怠りることはできません。
そこでまたせっせと腹筋をする。
また解消する。
そこでこの人はこう思うわけです。
「腹筋が落ちてくると痛みが発生する。
これは筋力が落ちてきたからで、腹筋をしている限り大丈夫だ。」
こうして筋力崇拝、という宗教にはまっていきます。
一応効果があるのですから、全く的外れではなく、解決方法の一種、と言っても悪くはないのですが、
筋力を崇拝している人は、筋力の低下が根本原因だと思っているのがちょっと気の毒なところです。
根本原因は他にあり(ズレのことです)、腹筋運動は、ズレを直さないで周囲を改善するだけの、あくまでも対処療法にすぎません。
先に例に出したお年寄りは、おそらくズレがない。
これまでも腰痛等が無い人の体も多く見ましたが、本当にズレがありませんので、
間違いないと思います。
ズレさえなければ、筋力は低下しても痛みは発生しません。
☆余談になりますが、腰にズレのあるひとは、ほぼ100パーセント肩こり、首コリも発生します。
したがって、肩、首をつまんでみるだけで、私は腰の状態もおおよそわかります。
ズレは、自分ではなかなか取れないのでしかるべき専門家に取ってもらうのが一番です
(ただし、安易な骨盤矯正などの看板を掲げているところはやめましょう。
医院選びは難しいです…)
「筋力の鎧をつけることにより関節を守る」
という様なことを言う人もいますが、これは
先日亡くなった千代の富士のようなアスリートが、肩の脱臼を防ぐような目的ならアリですが、
一般人の腰椎には全く適用されません。
私は琴欧州をはじめ、様々なアスリートも見てきましたが
「運動や、自分の肉体で人と競争してお金を儲ける」
というのは、普通の人間が考える以上に過酷で、その肉体の使い方や、
鍛え方を一般人に応用することは、非現実的です。
よく、カーレースで得たノウハウを市販車に応用する、というような車会社の触れ込みがあります。
それに似たような発想で、スポーツ選手の体のメンテナンス方法が究極かつ最良のものだとして、
一般人が真似しがちですが、全く話にならないくらい違います。
彼らは健康で、体力があると思われがちですが、体の故障は全体的に大変なものです。
そして何より商売道具で、それによりダイレクトに金銭を得ています。
壊れてガタガタの肉体を、生活のために高度な技術で維持してゆくために様々なノウハウがあり、
その中には確かに一般人に応用可能なものもありますが、何でも真似するのはやめましょう。
元気なおばあちゃんの例から考えても、
一般人に特殊なトレーニングは不要ですし、筋肉をつけることが趣味でもなければ、
筋力アップのための運動、まして金銭を払っての運動など必要ありません。
筋肉をパーツごとに鍛えたりすると、むしろ故障しやすいので十分に注意が必要です。
筋力崇拝は、無知と、スポーツジム等の利権が生んだ迷信に近いものがあることを冷静に見破る必要があります。
病気、けがで長期寝ていた場合はどんなに若い人であっても絶対筋肉量が不足するので、
それは専門家の指導の下に筋力を回復するべきですが、それ以外の人は、
歩く
日常的動作を嫌がらない
(昔でいう、掃除、洗濯や、片付けなど)
ということで、筋肉量はしっかりと保てる様にできています。
「ここの筋肉を鍛える」
というようなことを考えず、まずは
しっかりと歩き、こまめに動く、
ということを実践していただきたいと思います。
そう、これは、動けるお年寄りがやっていることそのものです。
そしてこれと関連して、
ここでもう一つ、痛みを発生させないための重要なことをお話ししておきます。
筋肉に痛みを発生させない最大のポイントは
絶対的な筋肉量を上げることではなく、
筋肉のバランスを保つことです。
ご老人でもスムーズに動ける人は、
バランスよく筋肉を使っており、筋肉のバランスが取れているからです。
筋肉は、必ず表と裏で対になっています。
曲げる筋肉があれば、伸ばす筋肉があり、両方が協力する様になっています。
すべての物事に裏と表、光と影があるように、筋肉も表裏一体となって、一つのものです。
西洋医学では、すべてをパーツでみますので、
この「表と裏でワンセット」という考えが成立しずらく、
傷んでいる筋肉だけ、弱っている筋肉だけ、を見て
そのパーツをまるで機械を修理するように修復したり、鍛えたりしようとします。
しかし、単独で働いている筋肉なんて人間の体には存在せず、一つの筋肉が動くと
多数の筋肉が一斉に動きます。
さらには、人体解剖図を見ると、一つ一つの筋肉をバラバラに書いてあったりするので、
様々な筋肉が組み合わさって人体が構成されていると考えがちですが、
これらの筋肉は実際には引っ付いたり、筋膜を介して強固に結びついていたりして、
バラバラではありません。
あえて引きはがせば「僧帽筋」「上腕二頭筋」などに分解できるよ、
というだけで、実際の筋肉は一まとまりです。
さて、
その中でもある一つの筋肉(というより、一部の筋繊維)
だけが、異様に硬くなったり、逆に弱まって伸びてしまったりすると、
アンバランスが生じ、痛みが発生します。
とりあえず治すには、その障害の発生した筋肉を治すことも重要ですが、
その筋肉が存在してる「ユニット」も治すことが重要です。
少なくとも、縮んでいる筋肉の反対の筋肉も治す。
そして、痛めた筋肉を狙って強化するのではなく、ユニットがしなやかに動くようにしてゆくことが重要です。
私の施術では、例えば首の前が痛かったら後ろを、
後ろが痛かったら前を治すようなことをよくやります。
鍼の治療でも、
痛みの発生している体の一番遠い部分を治療しろ、
というような理論も昔から存在します。
例えば、頭の右前が痛かったら、左足の踵あたりを治療するわけです。
西洋医学に慣れた人はこれで痛みが取れたりすると、びっくりするわけですが、
東洋医学的な発想に慣れてくると、
頭が痛いから頭の治療をする、というのは、よく考えれば直接的でひねりがなく、ちょっと芸が無さすぎるとさえ思えてきます。
これまでの話をまとめると
◎腰痛の原因は、骨のズレにより、ずれた骨の周囲にある筋肉、靭帯に過度のストレスがかかり、痛みが生じたものであることが多い。
(今回は論じていないが、内臓からもくる)
◎解消するためには、ズレを直せばよい。
(これは最良の方法で、肩こりも大体治ります。
肩こりが取れなければ、骨盤のずれは直っていないと考えてもいいくらいです)
◎腹筋、背筋を鍛えても骨のズレは治らないので、全く無意味ではないが、対処療法にしかならないことを理解すべき。
怠ると再発するか、むしろ悪化させることもある。
◎腹筋、背筋を鍛えていない老人でも元気で歩いている人を見れば、絶対筋肉量が足腰の痛みとは無関係なことはすぐに分かる。
◎腹筋背筋運動をすることにより、筋力がついたから治ったのではなく、周囲の筋肉が柔軟性を取り戻したため、ズレ吸収しやすくなり、多少のずれでも痛みが発生しなくなっただけである。
◎ズレは専門家に取ってもらうのが話が早い、というか、基本的にはそれしか根本解決はない。
◎ジム通いなど、特殊な運動をする必要はない。
◎ケガや病気などで長期寝ていた人以外は、高齢であっても動いてさえいれば絶対的筋力不足に陥ることはない。
ということが、これまで述べてきたことです。
最後にもう一つありましたね。
じゃあ運動をしなくていいか?
という質問に対してですが、
ジムなどでする必要がないだけで、した方がいいのは間違いありません。
それは、こまめに動くことと、歩くことである。
です。
歩くことは足だけの問題ではなく、注意深く観察していれば、首の後ろの筋肉までその動きが
波及してきていることはわかると思います。
十分な全身運動たりえるものなのです。
しかも、人間に基本的、本能的に与えられた機能であり、動きであるので無理がありません。
無理がなさすぎるうえに、つまらないし、歩いているだけではお金にならないので、
色々な人が色々面白おかしい運動を考え出して、あれこれ言いますが、まずは
日常運動不足の人は歩いていれば良いと思います。
あとは、せいぜい軽いストレッチや、昔からある腕立て伏せや腹筋運動を軽く行う程度でいいと思います。(腹筋運動は上体を完全に上げると尾骨を痛めやすいので上半身を軽く持ち上げる様な動きがいいと思います)
食べ物だって、ごはん、味噌汁、魚、納豆というものを食べているのが一番だ、ということはもうとっくの昔に分かっているのに、
これではお金にならないし、本も売れない、気の利いたことを言わないと注目されない、有名になれない、あの食材を売りたい、売りたくない、
などなど、様々な意図のもとに未だに健康な食事とはなにか?
が議論され、新しい健康法や健康食が現れては消え、現れては消えしている現状と全く同じです。
最後に、
このように、世の中に無反省に使われている「常識」には疑うべきものが多数ある。
私は東洋哲学科出身で、基本的に懐疑することばかり行ってきたので(笑)、少々世の中を斜めに見過ぎかもしれませんが、明らかに怪しげなエセ科学や新興宗教より、無反省に言われている「常識」ほど、間違っている場合は自分も人を傷つける可能性は高いので気を付ける必要があります。
人々が「信じている」ものはそれほど危険じゃないことが多い。
新興宗教だって、入らなければ終わりですし、エセ科学的な製品も使わなければいい。
しかし常識化した間違いは、皆が無反省、無意識に使っているので、案外注意が必要だと思う、とういうことを書いて終わりにします。
「ここが痛いのは筋力が足らないからですか?」
「筋力が足らないから痛みが出ているのはわかっています」
なんていう発言をよく聞きます。
「ここがおかしいのはリンパが流れていないからですか?」
というのも多いです。
リンパ、筋力は現在のところ、体の不調、痛みが発生した際に患者さんが、まず原因と考える
二大要素だと感じています。
しかし、これらの「体の不調を引き起こすもの」は、テレビなどの影響による
「流行りすたり」があり、今はこの二つが単に医学常識っぽくなっているだけで、
かならずしも重要な要因ではありません。
間違った認識がとても強いリンパですが、今回は置いておいて、もう一つの
「筋力の低下」
について考えてみたいと思います。
腰痛等体の痛みが出て医者に行くと、整形外科に限らず、鍼、接骨院、整体などで
「これは筋力の低下ですね。トレーニングしてください」
という様なことをすぐ言われてしまうと思います。
私の子供のころはそんなことはほとんど言われなかったと思うのですが、明らかにこの10年くらいの流行りです。
「筋力が足りていないですからね…」
と嘆く30代、40代男性も珍しくありません。
しかし、ここは冷静に考えてみましょう。
本当に腰痛等の原因は筋力の低下でしょうか。
以下のことをよく考えてみて下さい
大変元気で、80、90になっても家事労働を難なくこなし、
時には小走りで走ったりしているご老人をテレビで見ることが多いと思います。
ご近所にもいるかもしれません。
大体、年取っても元気なのは女性の方が多い傾向があると思いますが、
このような90歳で足腰のしっかりしているお年寄りの「筋力」はどのくらいあるでしょうか?
筋力が不足している、と嘆いている30代男性より強いのでしょうか?
そんなことはあり得ません。
絶対的な筋肉量や、パワーは遥かに下です。
おばあさんより明らかに20代、30代女性の方が「筋力」は上ですが、
彼女たちであっても、男性より一般的に筋力が弱いのは明白です。
そして男性より弱いにも関わらず、腰痛にならない人もたくさんいます。
こんなことからも
「筋力が不足している=腰痛の原因」
という「一般的常識」は、全く間違ってはいないとはいえ、
ずいぶん無理がある理論であることはすぐお分かりいただけると思います。
腰痛の第一要因として考えるのはちょっと無理です。
少し考えるとこれはすぐに分かることでも、
医者、という立場の人間に言われると無条件に信じてしまいます。
新興宗教の理論や、エセ科学と言われるもののように、明らかに突飛な理論をいきなり持ってこられると、
強いアレルギー反応を示す人が多いのですが、未だ科学で解明されていないだけで、
もしかしたら宝の山が眠っているかもしれない新説より、明らかに単純でおかしい
「筋力不足=体の痛みの原因」
を皆信じてしまうのは、おかしな現象です。
(別にエセ科学を全面的に推奨しているわけでは全くありませんが、科学で解明されてることは、ごく一部であるのは確かです。
今の我々にはとっぴに見えることにも過剰に反応しないで、冷静に受け入れ、分析する態度はもちたいものです。
反対に常識に疑うべきものもたくさんあります)
さて、元気なおばあさんたちは、
必ずしもスポーツをやっていて、日常的に筋トレしているわけではありません。
むしろそんなことをしている人は遥かに少ないでしょう。
(反対に、スポーツをしている方のほうが痛めやすく、しょっちゅう整体に来るのは、むしろスポーツを恒常的にしている30~50代の方なのは間違いありません)
では何故絶対筋肉量が少ないのに、腰痛にならないのか。
いくつが要因がありますが、
その前に、腰痛の主な原因を簡単に二つに分けて挙げてみます。
私は特殊な施術をしているので、原因と思うことも特殊かもしれませんが、何百もの症例から考え、間違いのないところを書きます。
①腰椎、骨盤、仙骨のズレ。
そして、そのズレを補正しようとして働きすぎた、それらの骨の周囲についている、小さな筋肉や、靭帯の硬化(柔軟性の低下)
②内臓の働きの低下による、内臓のツレ(突っ張り)が腰椎、骨盤に響いているもの
この二つです。
今回は①の要因について論じます。
①のような、ズレがあると、じっとしていても、筋肉にアンバランスが生じます。
ここに
「動かなずぎる」
「動きすぎる」
「無理な体勢をする」
そして
「精神的なストレス、緊張」
等の要因が加わり、骨の周囲の靭帯、筋肉が固くなり、柔軟性を失うと、ズレがない人よりも、ズレのある人は痛みの発生する閾値が低いので(要するに痛みが発生しやすいということです)、
容易に痛みが発生します。
その他関節に発生する痛みは単純に言うと、殆どこれが原因です。
よって、痛みを発生させないためには、まず
「ズラさない」
そして
「ズレていたとしても、過剰なストレスを筋肉にかけて、硬くしない」
ということが重要になります。
要するに、腰痛を発生させないために重要なのは、無理な体勢、姿勢などで
骨をずらさない、ということです。
筋力の有無とはほとんど関係がありません。
筋力をつけても、ズレが元に戻ることは経験上ありません。
しかし、一方で
「筋力をつけたら腰痛が治った、という話を聞くじゃないか!」
と言われそうです。
確かに、これは私も聞いたことがありますし、実際にこれで腰痛を解消した人もおられるでしょう。
何故腹筋や背筋を鍛えることにより腰痛が治るか?
これは、筋力がつくからではなく、腹筋、背筋をつける為の運動により、
脊椎や、骨盤周りの筋肉に柔軟性が生じるからだろうと思います。
座り作業が長く、同じ姿勢で固まってしまった結果腰痛を生じている人が腹筋運動で改善した場合、
絶対的な筋肉量がついたから解消したのではなく、
その過程の運動が良かったのだろうと私は思っています。
しかし、先に書いたように、筋肉がついても骨のズレ、ゆがみは取れませんので、
腹筋運動を怠り、仕事などでまた長時間同じ姿勢をとり続けると、すぐに痛みが再発しがちです。
ズレという腰痛の「火種」がありますので、運動による柔軟性の維持を怠りることはできません。
そこでまたせっせと腹筋をする。
また解消する。
そこでこの人はこう思うわけです。
「腹筋が落ちてくると痛みが発生する。
これは筋力が落ちてきたからで、腹筋をしている限り大丈夫だ。」
こうして筋力崇拝、という宗教にはまっていきます。
一応効果があるのですから、全く的外れではなく、解決方法の一種、と言っても悪くはないのですが、
筋力を崇拝している人は、筋力の低下が根本原因だと思っているのがちょっと気の毒なところです。
根本原因は他にあり(ズレのことです)、腹筋運動は、ズレを直さないで周囲を改善するだけの、あくまでも対処療法にすぎません。
先に例に出したお年寄りは、おそらくズレがない。
これまでも腰痛等が無い人の体も多く見ましたが、本当にズレがありませんので、
間違いないと思います。
ズレさえなければ、筋力は低下しても痛みは発生しません。
☆余談になりますが、腰にズレのあるひとは、ほぼ100パーセント肩こり、首コリも発生します。
したがって、肩、首をつまんでみるだけで、私は腰の状態もおおよそわかります。
ズレは、自分ではなかなか取れないのでしかるべき専門家に取ってもらうのが一番です
(ただし、安易な骨盤矯正などの看板を掲げているところはやめましょう。
医院選びは難しいです…)
「筋力の鎧をつけることにより関節を守る」
という様なことを言う人もいますが、これは
先日亡くなった千代の富士のようなアスリートが、肩の脱臼を防ぐような目的ならアリですが、
一般人の腰椎には全く適用されません。
私は琴欧州をはじめ、様々なアスリートも見てきましたが
「運動や、自分の肉体で人と競争してお金を儲ける」
というのは、普通の人間が考える以上に過酷で、その肉体の使い方や、
鍛え方を一般人に応用することは、非現実的です。
よく、カーレースで得たノウハウを市販車に応用する、というような車会社の触れ込みがあります。
それに似たような発想で、スポーツ選手の体のメンテナンス方法が究極かつ最良のものだとして、
一般人が真似しがちですが、全く話にならないくらい違います。
彼らは健康で、体力があると思われがちですが、体の故障は全体的に大変なものです。
そして何より商売道具で、それによりダイレクトに金銭を得ています。
壊れてガタガタの肉体を、生活のために高度な技術で維持してゆくために様々なノウハウがあり、
その中には確かに一般人に応用可能なものもありますが、何でも真似するのはやめましょう。
元気なおばあちゃんの例から考えても、
一般人に特殊なトレーニングは不要ですし、筋肉をつけることが趣味でもなければ、
筋力アップのための運動、まして金銭を払っての運動など必要ありません。
筋肉をパーツごとに鍛えたりすると、むしろ故障しやすいので十分に注意が必要です。
筋力崇拝は、無知と、スポーツジム等の利権が生んだ迷信に近いものがあることを冷静に見破る必要があります。
病気、けがで長期寝ていた場合はどんなに若い人であっても絶対筋肉量が不足するので、
それは専門家の指導の下に筋力を回復するべきですが、それ以外の人は、
歩く
日常的動作を嫌がらない
(昔でいう、掃除、洗濯や、片付けなど)
ということで、筋肉量はしっかりと保てる様にできています。
「ここの筋肉を鍛える」
というようなことを考えず、まずは
しっかりと歩き、こまめに動く、
ということを実践していただきたいと思います。
そう、これは、動けるお年寄りがやっていることそのものです。
そしてこれと関連して、
ここでもう一つ、痛みを発生させないための重要なことをお話ししておきます。
筋肉に痛みを発生させない最大のポイントは
絶対的な筋肉量を上げることではなく、
筋肉のバランスを保つことです。
ご老人でもスムーズに動ける人は、
バランスよく筋肉を使っており、筋肉のバランスが取れているからです。
筋肉は、必ず表と裏で対になっています。
曲げる筋肉があれば、伸ばす筋肉があり、両方が協力する様になっています。
すべての物事に裏と表、光と影があるように、筋肉も表裏一体となって、一つのものです。
西洋医学では、すべてをパーツでみますので、
この「表と裏でワンセット」という考えが成立しずらく、
傷んでいる筋肉だけ、弱っている筋肉だけ、を見て
そのパーツをまるで機械を修理するように修復したり、鍛えたりしようとします。
しかし、単独で働いている筋肉なんて人間の体には存在せず、一つの筋肉が動くと
多数の筋肉が一斉に動きます。
さらには、人体解剖図を見ると、一つ一つの筋肉をバラバラに書いてあったりするので、
様々な筋肉が組み合わさって人体が構成されていると考えがちですが、
これらの筋肉は実際には引っ付いたり、筋膜を介して強固に結びついていたりして、
バラバラではありません。
あえて引きはがせば「僧帽筋」「上腕二頭筋」などに分解できるよ、
というだけで、実際の筋肉は一まとまりです。
さて、
その中でもある一つの筋肉(というより、一部の筋繊維)
だけが、異様に硬くなったり、逆に弱まって伸びてしまったりすると、
アンバランスが生じ、痛みが発生します。
とりあえず治すには、その障害の発生した筋肉を治すことも重要ですが、
その筋肉が存在してる「ユニット」も治すことが重要です。
少なくとも、縮んでいる筋肉の反対の筋肉も治す。
そして、痛めた筋肉を狙って強化するのではなく、ユニットがしなやかに動くようにしてゆくことが重要です。
私の施術では、例えば首の前が痛かったら後ろを、
後ろが痛かったら前を治すようなことをよくやります。
鍼の治療でも、
痛みの発生している体の一番遠い部分を治療しろ、
というような理論も昔から存在します。
例えば、頭の右前が痛かったら、左足の踵あたりを治療するわけです。
西洋医学に慣れた人はこれで痛みが取れたりすると、びっくりするわけですが、
東洋医学的な発想に慣れてくると、
頭が痛いから頭の治療をする、というのは、よく考えれば直接的でひねりがなく、ちょっと芸が無さすぎるとさえ思えてきます。
これまでの話をまとめると
◎腰痛の原因は、骨のズレにより、ずれた骨の周囲にある筋肉、靭帯に過度のストレスがかかり、痛みが生じたものであることが多い。
(今回は論じていないが、内臓からもくる)
◎解消するためには、ズレを直せばよい。
(これは最良の方法で、肩こりも大体治ります。
肩こりが取れなければ、骨盤のずれは直っていないと考えてもいいくらいです)
◎腹筋、背筋を鍛えても骨のズレは治らないので、全く無意味ではないが、対処療法にしかならないことを理解すべき。
怠ると再発するか、むしろ悪化させることもある。
◎腹筋、背筋を鍛えていない老人でも元気で歩いている人を見れば、絶対筋肉量が足腰の痛みとは無関係なことはすぐに分かる。
◎腹筋背筋運動をすることにより、筋力がついたから治ったのではなく、周囲の筋肉が柔軟性を取り戻したため、ズレ吸収しやすくなり、多少のずれでも痛みが発生しなくなっただけである。
◎ズレは専門家に取ってもらうのが話が早い、というか、基本的にはそれしか根本解決はない。
◎ジム通いなど、特殊な運動をする必要はない。
◎ケガや病気などで長期寝ていた人以外は、高齢であっても動いてさえいれば絶対的筋力不足に陥ることはない。
ということが、これまで述べてきたことです。
最後にもう一つありましたね。
じゃあ運動をしなくていいか?
という質問に対してですが、
ジムなどでする必要がないだけで、した方がいいのは間違いありません。
それは、こまめに動くことと、歩くことである。
です。
歩くことは足だけの問題ではなく、注意深く観察していれば、首の後ろの筋肉までその動きが
波及してきていることはわかると思います。
十分な全身運動たりえるものなのです。
しかも、人間に基本的、本能的に与えられた機能であり、動きであるので無理がありません。
無理がなさすぎるうえに、つまらないし、歩いているだけではお金にならないので、
色々な人が色々面白おかしい運動を考え出して、あれこれ言いますが、まずは
日常運動不足の人は歩いていれば良いと思います。
あとは、せいぜい軽いストレッチや、昔からある腕立て伏せや腹筋運動を軽く行う程度でいいと思います。(腹筋運動は上体を完全に上げると尾骨を痛めやすいので上半身を軽く持ち上げる様な動きがいいと思います)
食べ物だって、ごはん、味噌汁、魚、納豆というものを食べているのが一番だ、ということはもうとっくの昔に分かっているのに、
これではお金にならないし、本も売れない、気の利いたことを言わないと注目されない、有名になれない、あの食材を売りたい、売りたくない、
などなど、様々な意図のもとに未だに健康な食事とはなにか?
が議論され、新しい健康法や健康食が現れては消え、現れては消えしている現状と全く同じです。
最後に、
このように、世の中に無反省に使われている「常識」には疑うべきものが多数ある。
私は東洋哲学科出身で、基本的に懐疑することばかり行ってきたので(笑)、少々世の中を斜めに見過ぎかもしれませんが、明らかに怪しげなエセ科学や新興宗教より、無反省に言われている「常識」ほど、間違っている場合は自分も人を傷つける可能性は高いので気を付ける必要があります。
人々が「信じている」ものはそれほど危険じゃないことが多い。
新興宗教だって、入らなければ終わりですし、エセ科学的な製品も使わなければいい。
しかし常識化した間違いは、皆が無反省、無意識に使っているので、案外注意が必要だと思う、とういうことを書いて終わりにします。